2017年03月01日

語彙導入 中級以降

◇中級以降の語彙導入

・事前準備
対訳表を示したほうが理解が早い気がします。なので、私は対訳がある教材がよいと感じています。
辞書で調べてくるのが宿題、という考え方もありますが、辞書だと「どの言葉が正解の言葉かわからない」という難点があります。

例えば「しま」という言葉をひらがなで調べた場合、「島」「縞」の全然違う言葉が出てきます。
そういった場合、語彙調べの単語表では「しま」としか書いていないため、どちらの意味を書けばいいのかがわからないということになるからです。

ここで2つとも書けばいいじゃないか、という意見もあるでしょうが、2つとも書こうとする真面目な学習者の方が、言葉の波に飲み込まれて勉強が嫌いになってしまうおそれがあります。それに、同じ発音で意味が2つ以上もある言葉は結構あります。


・音読
新しい言葉の意味を母国語(使用言語)で書かせたら、まず読む練習をしています。
できれば、新しい言葉の読み方も学習者自身に書かせるほうがいいと思います。
読む練習をするときに、発音のチェックもしてやると効果があるようです。
「小さい『つ』(促音)がある?」
「てんてん(濁点)がある?ない?」
などと、常に発音も意識させてやると、「促音の聞き取りができない」「長音の有無がわからない」という学習者も少しずつ減る気がします。


・教師の仕事
『中級から学ぶ日本語』の著者松田先生が講演でおっしゃっていたのですが、日本語教師は「辞書に載っていないことを教えてやらなければいけない」のだそうです。
辞書に載っていないこと、載っていてもわかりにくいこと、それを示してやると、学習者は興味を持って「新しい言葉を使ってみよう」という気になるようです。

▪ニュアンスを伝える
プラスイメージなのか、マイナスイメージなのか、などのニュアンスは、辞書に載っていません。
なので「平凡」というと「普通」と似ているけれど、あんまりいいイメージじゃないから「平凡な人」は悪口や謙遜になるから、ということを紹介してやるといいと思います。

▪コロケーションを紹介する
一緒によく使うことばを紹介します。
例えば「分別する」なら、一緒に使う言葉は「ゴミを分別する」などではないでしょうか。
例文が載っている辞書ならいいですが、例文なしの辞書アプリを使っている学習者は多いです。
また、せっかく例文があっても、その学習者のレベルに合わない難しい語彙を使っている場合もあります。
なので、自分が担当している学習者が使えそうな語彙と一緒に紹介すると、メモもとっているようです。

▪助詞を紹介する
上記のコロケーションと似ているのですが、「『が』ですか、『を』ですか・・・」というのは、学習者にとって、ずっとついてまわる難しい問題です。なので、動詞を教えるときには、どんどん熟語として教えてやる
といいと思います。


・実際の授業で
意味がわかっているかどうかの確認のし方は大きく分けて3種類あります。
①新しい言葉を使った文で質問して、答えられるかどうかをみる
②新しい言葉の意味を日本語で説明させる
③新しい言葉を使って例文を作らせる



◇名詞
名詞は辞書が間違ってさえいなければ大丈夫なので、確認も簡単に済ませます。
ただ、時には辞書が間違っている(日本語の意味とは異なっている)場合があるので、必ずQAで確認します。

「教授」
T:教授はどんな人ですか?
S:大学を卒業してから、ずっと勉強している人です。(ベトナム学習者)
T:え、本当ですか。辞書に書いてありましたか。
S:はい。
T:そうですか。日本で「教授」は「大学の先生」のことです。学生じゃなくて、先生です。

最近、学習者が答えた意味説明が、日本人の私の思う意味と違っても、否定しないようにしています。

上の例でも、「違うよ!」と昔なら言っていたと思いますが、学習者に悪気はなく、辞書に載っていたことを説明しただけです。また彼らの母国語の意味が日本語と違ったのかもしれません。あくまで「日本語の意味だから」ということで、日本人が思う意味を説明します。

他にも、反意語を確認してみたり、漢字の意味を確認してみたり、1つの語にこだわらずに確認することが大切だと思います。


◇動詞
上記にも書いたとおり、動詞の場合は、コロケーションと助詞を絡めて意味確認をします。
それから、「何グループか」ということも確認しておきます。中級以降になると、確認するのを忘れてしまいがちです。学習者の活用がいい加減になってしまう原因の一つは、教師側の確認不足もあるのだな、と感じています。

「乱れる」
T:〇〇さんの生活は乱れていますか?乱れていませんか?
S:乱れていません。
T:そうですか。毎日何時に寝ていますか?
S:11時に寝ています。
T:1日に何回ご飯を食べますか?
S:3回食べます。
T:とてもいいですね。本当に生活は乱れていませんね。
T:「乱れる」は何グループですか?
S:Ⅱグループ?
T:そうです。ない形は?・・・

注意すべきは、「はい」とか「いいえ」だけで済まさずに、本当にそうなのかどうかを質問をしてみて、確認することだと思います。
「生活が乱れてない」と学習者が言ったとしても、こちらが思っている内容とずれているかもしれないからです。


「話し合う」
T:お父さんやお母さんと話し合ったことがありますか。
S:はい、あります。
T:どんなときに話し合いましたか?
S:留学する前に話し合いました。
T:いいですね。「~合う」は、「一緒に~する」という意味です。
  他にどんな言葉があるでしょうか。
S:言い合う、見せ合う、相談し合う・・・
T:とてもいいですね。
  「話し合う」は動詞ですか、名詞ですか。
S:動詞です。
T:じゃあ、名詞にしましょう。何と言いますか。
S:「話し合い」です。
T:そうですね。

中級以降になると、「複合動詞」が出てきます。
1つ出てきた時に、いくつかまとめて確認してみたり、品詞の理解を促してみたり、いろいろな方向から質問してみると、興味を持ってくれるようです。


◇副詞
恐らくいちばん難しいのだと思います。
副詞で気をつけているのは、動詞や名詞と違って「あまり日本語での説明を求めない(言い換えをさせない)こと」です。
できれば、自作の絵などを準備して、どんな時に使うのかを場面で示すようにしています。

「確か」
絵:何かを思い出しているような顔の人

T:この人は今、思い出しています。
  どこに財布を置きましたか・・・?
  うーん・・・机の上に置きました・・・と思います。
  忘れましたから絶対じゃありませんが、机の上に置いたと思います。
  「確か、机の上に置いたと思います」

T:〇〇さんのかばんの中に何が入っていますか?
S:財布とパスポートです。
T:もうありませんか?絶対ですか?
S:絶対じゃありません。でも私のかばんですからわかります。
T:そうですか。絶対じゃありませんね、そのとき「確か」を使います。
  新しい言葉を使ってみましょう。
S:確か、財布とパスポートが入っていたと思います。

まず、例文をこちらで示してから、実際に例文を作らせてみると、割とスムーズに理解できるようです。

副詞の場合は、似ている言葉が多いので(「確か」と「確かに」や、「ゆっくり」「しっかり」「すっかり」など)違いを聞かれたときに、慌てず例文を挙げられるといいと思います。

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posted by 穂村香 at 19:23| Comment(0) | 授業について | 更新情報をチェックする

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